ペリカン(pelican)型番M800の意味と種類

ペリカン(pelican)型番M800の意味と種類

ペリカンの万年筆を選ぶ際、「M800」や「M400」といった型番を目にすることが多いでしょう。しかし、この「M」や「800」が具体的に何を意味しているのか、正確に理解している方は意外と少ないものです。
実は、ペリカンの型番には明確な法則があり、アルファベットと数字の組み合わせによって、製品の種類とサイズが一目で分かるようになっています。本記事では、スーベレーンをはじめとするペリカン製品の型番体系を、玄人向けに徹底解説します。

ペリカンの型番構造|基本的な読み解き方

ペリカン万年筆の型番構造まとめ

ペリカンの型番は、「アルファベット+数字」で構成されています。 

例えば、スーベレーンM800であれば「M」と「8」「00」に分解することができ、それぞれに意味を持っています。

ペリカンの型番構造

  • アルファベット部分:筆記具の種類(万年筆、ボールペンなど)
  • 数字前半部分:サイズや位置づけ(大きさ、グレード)
  • 数字後半部分:装飾のカラー(ゴールドかシルバーか)

「M800」であれば、「M」が万年筆であることを示し、「8」がそのサイズ規格、「00」はゴールドカラーであることを表しています。この組み合わせを理解することで、カタログや中古市場での検索効率が格段に向上します。

それでは、もっと詳しく解説していきます。

アルファベットが示すのは筆記具の種類

ペリカン型番-アルファベットの意味

ペリカンの型番に使われるアルファベットは、「M」「P」「K」「R」「D」の5種類があり、ドイツ語の頭文字に由来しています。それぞれの意味を詳しく見ていきましょう。

Mは万年筆 – ピストン式という意味

「M」はピストン式万年筆を示します。ドイツ語で「機械式ペン」を意味する「Mechanik-Füller」(または「Mechanisch Federhalter」)の頭文字です。

スーベレーンシリーズにおいて最も知名度が高く、M400、M600、M800、M1000といったバリエーションが展開されています。これらはすべて万年筆であり、数字が大きくなるほどボディサイズも大きくなります。

ピストン吸入機構を備え、インク瓶から直接本体内部にインクを吸入できる構造が特徴です。カートリッジ式ではないため、インク容量が多く、長時間の筆記に適しています。

Pは万年筆 – カートリッジ式という意味

「P」はカートリッジ式万年筆を示します。ドイツ語で「カートリッジ」を意味する「Patrone」(正式には「Tintepatronen」=インクカートリッジ)の頭文字です。

ピストン吸入機構を持つ「M」シリーズに対し、「P」シリーズはカートリッジ/コンバーター両用式を採用しています。主にクラシックコレクションのP200、P205などがこれに該当し、スーベレーンシリーズではほとんど見られません。

カートリッジ式はインク交換が簡単で、初心者や携帯性を重視するユーザーに適しています。ただし、インク容量はピストン式に比べて少なめです。

Kはボールペンという意味

「K」はボールペンを示します。ドイツ語で「ボールペン」を意味する「Kugelschreiber」の頭文字です。

スーベレーン ボールペンとして知られるK800やK400がこれに該当します。万年筆のM800やM400と同じデザインを踏襲しており、上部をひねることで芯が出るツイスト式を採用しています。

G2規格(パーカータイプ)のリフィルに対応しているため、替え芯の入手が容易で実用性が非常に高いことも特徴です。

ボールペンとローラーボールペンは同じかと思われがちですが、意外にも使い心地は違います。ボールペンは油性のインクで、粘りがありどっしりとした太く重みのある文字を書くことができる反面、インクつまりをおこすこともしばしばあります。反対にローラーボールペンは水性のインクでサラッとした書きごこちであり、細くてくっきりとした文字を書くことができますが、にじみやすく裏うつりすることもあるので注意が必要です。

Rはローラーボールペンという意味

「R」はローラーボールを示します。水性インクを使用し、万年筆のような滑らかな書き心地とボールペンの手軽さを兼ね備えた筆記具です。

R800、R400といったモデルが存在し、こちらもスーベレーンのデザインを踏襲しています。キャップ式が多く、万年筆に近い所作で使用できるため、万年筆ユーザーのサブペンとしても人気があります。

Dはメカニカルペンシルという意味

「D」はメカニカルペンシル(シャープペンシル)を示します。ドイツ語で「プッシュペンシル」を意味する「Druckbleistift」の頭文字です。

スーベレーンシリーズではD600、D400といったモデルがあり、0.7mm芯を使用するツイスト式が主流です。万年筆やボールペンと同じデザインを踏襲しているため、筆記具をシリーズで揃える際に統一感が得られます。

最初の数字が示すのはサイズとグレード

ペリカン型番-最初の数字の意味

アルファベットの後に続く数字の前半部分は、製品のサイズや位置づけを示しています。基本的に数字が大きいほど、ボディサイズが大きく、価格帯も上位になります。

例えば、ペリカンの万年筆やボールペンといった筆記具で人気が高いのはM800といわれています。この「8」の部分がボディサイズを表しています。

ボディサイズの違いについては、ペリカン万年筆スーベレーンM800とM400のスペックの違いや自分に合った選び方などをまとめた記事で詳しく紹介していますので、よかったら参考にしてください。

ペリカンスーベレーンM800・M400レビュー|モデルの違いと選び方ガイド

型番シリーズ特徴
M200クラシックエントリーモデル。ペン先はステンレス(金メッキ)
M300スーベレーンスーベレーンのミニモデル
M400スーベレーンスーベレーンのスタンダードモデル
M600スーベレーンスーベレーンのミドルサイズ
M700トレドトレドのベースモデル
M800スーベレーンスーベレーンのラージサイズ。フラッグシップモデルであり、人気が高い。
M900トレドトレドのビッグモデル。ビッグトレドと呼ばれる。
M1000スーベレーンスーベレーンのエクストララージサイズモデル

2番台|クラシックシリーズ

2番台は、クラシックシリーズに用いられる番号です。一言で言うと、「スーベレーンM400とほぼ同じサイズ感でステンレスペン先のエントリーモデル」です。M200とM400を並べてみてもサイズ感の違いはわからないほど似ており、勘違いされてしまうこともあります。

M400が14金のペン先であるのに対しM200はステンレス(金メッキ)のペン先のため、カリカリとした硬い書き味で、価格面でも手頃という面も魅力です。

3番台|スーベレーンミニモデル

3番台は、スーベレーンのミニモデルで用いられる番号です。かなり小ぶりで手帳と一緒に持ち歩けるコンパクトなサイズ感です。

4番台|スーベレーンスタンダードサイズ

M400、K400、R400といった400番台は、スーベレーンの中で最も歴史が古く、スタンダードサイズとして位置づけられています。

1950年代の名作「400」を源流に持ち、全長約12.5cm(筆記時約14.5cm)と、日常使いに適したバランスの良いサイズです。軽量で携帯性に優れ、手帳や小型ノートへの筆記に向いています。

特に女性ユーザーや、万年筆初心者からの支持が厚いモデルです。

6番台|スーベレーンミドルサイズ

M600は400と800の中間に位置するモデルで、全長約13.6cm(筆記時約15.4cm)です。400では物足りないが、800ほど大きくなくてもよいという層に支持されています。

ただし、ラインナップとしては400や800に比べてバリエーションが少なく、限定色や特別仕様での展開が多い傾向にあります。

7番台|トレドシリーズベースモデル

7番台はトレドシリーズに用いられる番号で、サイズ感はスーベレーンM400に近いモデルです。

トレドシリーズは胴軸(ボディ)が樹脂ではなく、スターリングシルバー(SV925)で作られています。その上に24金メッキ(ヴェルメイユ加工)を施し、職人が手作業でペリカンの彫金を入れているため、芸術性の高いシリーズです。

8番台|スーベレーンラージサイズ(フラッグシップ)

M800、K800、R800といった800番台は、スーベレーンのフラッグシップモデルです。全長約14cm(筆記時約16.3cm)と、しっかりとした存在感があります。

1997年には「ペン・オブ・ザ・イヤー」を受賞しており、多くの万年筆愛好家が「最後の一本」として選ぶモデルとして知られています。真鍮製の内部パーツによる絶妙な重量バランスが、長時間筆記でも疲れにくい設計を実現しています。

中古市場でも最も取引が活発で、状態の良い個体は高値で安定しています。

9番台|トレドシリーズビッグトレド

9番台はトレドシリーズのビッグモデルであり、ファンからは「ビッグトレド」と呼ばれています。サイズ感はスーベレーンM800に近いモデルですが、トレドシリーズは胴軸(ボディ)が樹脂ではなく、スターリングシルバー(SV925)で作られているため、ずっしりとした重量感と存在感があり、ペリカンのラインナップにおける事実上の頂点(キング・オブ・ペリカン)です。

流通量が少ないため、高額で取引されることもしばしばあります。

10番台|スーベレーンエクストララージサイズ

M1000は、スーベレーンシリーズ最大のサイズです。全長約14.8cm(筆記時約17.4cm)と、非常に大柄な作りになっています。

特筆すべきは、18金製の特大ペン先です。通常の万年筆よりも柔軟性が高く、筆圧によって線の太さが変わる、筆のような独特の書き味を持っています。大きな文字を書く方や、署名用として使用する経営者層からの需要が高いモデルです。

数が少なく希少性が高いため、状態が良ければ中古市場でも高値で取引されます。

後半の数字が示すのは装飾のカラー

ペリカン型番-後半の数字の意味

数字末尾2ケタは00はゴールドトリム、05はシルバートリムであることを示しています。

その他、09マットブラックも登場。高光沢のPVDコーティング仕上げが施された特別な製品です。

番号カラー
00ゴールドトリム
05シルバートリム
09マットブラック

余談:後半型番についての考察

ここまで解説してきたおさらいをすると、型番数字部分が「805」の場合、スーベレーンのシルバートリムであるとわかるようになりました。

ただ最近「M815」のように、真ん中に「1」が付けられた製品をちらほら見かけるようになり、これまで「05」でシルバートリムだと思っていた数字の意味が、実は「5」だけでシルバーなのではないかと思っています。

そしておそらく真ん中の「1」は内部機構の素材に違いがあるかもしれないな…と考えています。

なかなかM815といった特殊な製品を目にする機会が少ないので、もし見比べる機会があったら詳しく調査します。

型番以外の識別ポイント|天冠ロゴと刻印

ペリカンの万年筆は、型番だけでなく天冠(キャップトップ)のロゴや描かれているペリカンの数や刻印によっても製造年代を判別できます。

ペリカンの雛の数

ペリカン万年筆型番以外の識別ポイントーヒナの数

ペリカンのロゴは「親ペリカンと子ペリカン」が描かれていますが、この子供(雛)の数が時代によって減っています。

  • 2羽(〜2003年頃まで)
    • 親鳥1羽 + 雛2羽。少し古いモデル。「オールド」として評価されやすい。
  • 1羽(2003年頃〜現在)
    • 親鳥1羽 + 雛1羽。現行に近いモデル。「増えすぎたペリカンの雛の間引きが行われた(少子化)」などと冗談で言われますが、デザインの簡略化です。

買取の現場では雛が1羽の2003年以降のモデルが多く持ち込まれます。たまに雛の数が2羽ものに出会うと「おっ」と思ってしまいますね。ちなみにもっと古いモデルの場合、雛の数が4羽のものもあるそうです。昔のモデルほど子だくさん!

天冠ロゴの作り(材質)の違い

天冠ロゴの作りの違いで年代がわかる

ペリカン万年筆の天冠は大きく3世代に分かれます。特に初期型と呼ばれることもある彫り天冠の万年筆はファンからの評価が高く、売却査定時にプラス価格になることもあります。

  • 彫り天冠(〜1997年頃まで)
    • 樹脂の表面に物理的な溝(彫刻)が入っており、そこに金色の塗料が入っています。ヴィンテージ品としてコレクターがいるほど人気。
  • プリント天冠(1997年頃〜2010年頃)
    • 黒い樹脂の上に、金色のインクでロゴが印刷(シルクスクリーン)されている。ツルツルとした質感で黒と金のコントラストが美しいが、使用し続けていると擦れてロゴが消えてしまうこともあるため注意が必要。
  • 金属天冠(2010年頃〜現在)
    • 天冠全体が金色の金属パーツ(またはパラジウム)で高級感がある。

また、ロゴに描かれているペリカンの雛の数(1羽か2羽か)も重要な識別ポイントです。2羽の雛が描かれているものは比較的古い年代の製品であり、コレクターズアイテムとして価値が高まります。

キャップリングの刻印

キャップリング部分に「W.-GERMANY(西ドイツ)」の刻印がある個体は、1990年のドイツ統一以前に製造されたものです。この刻印がある万年筆は希少価値が高く、中古市場では通常より高値で取引される傾向にあります。

その他、ペン先には金の含有量を示す「14C」や「18C」の刻印があり、これもグレードを判断する材料になります。

ペリカン万年筆の売却時のポイント

もしこの記事をお読みの方で、メルカリなどを利用してペリカンの万年筆を売ろうと考えているならば、製品の写真を撮影する際、天冠ロゴやキャップリングのアップ写真を必ず1枚は入れておきましょう。

マニアはサムネイルで天冠ロゴを見て思わずクリックしてしまうでしょう。それくらい重要なパーツですのでネット上で売却する際に参考にしてください。

買取店でLINE査定を依頼する際にも同じように天冠ロゴやキャップリングのアップ写真を入れておくとしっかりと査定額に考慮されるはずです。是非お試しください。

リユース相談本舗ではペリカンの万年筆の買取を強化しております。他店で低く見積もられてしまった万年筆はありませんか?リユース相談本舗は豊富な知識を生かし、天冠ロゴや刻印、ペン先の種類などをしっかり考慮し、可能な限り高い買取価格を提示させていただきます。少しでも高く万年筆を売りたいと考えている方は是非リユース相談本舗をご利用くださいませ。

ペリカン万年筆買取

まとめ|ペリカンの型番を読み解けば、選択肢が広がる

ペリカン スーベレーンの型番は、単なる識別記号ではなく、製品の性質とサイズを的確に示す設計思想の結晶です。

  • アルファベットでペンの種類(M=万年筆、K=ボールペン、R=ローラーボール、P=ペンシル)が分かる
  • 数字でサイズとグレード(400=スタンダード、800=フラッグシップ、1000=最大)が分かる
  • 天冠ロゴや刻印で製造年代やヴィンテージ価値が判別できる

ペリカン スーベレーン M800の「M」と「800」の意味を正しく理解することで、自分の手のサイズや用途に最適なモデルを選ぶことができます。また、ペリカン スーベレーン ボールペン(K800など)も同じ法則で選べるため、万年筆とセットで揃える楽しみも広がります。

他ブランドの万年筆を既にお持ちの方も、ペリカンの型番体系を知ることで、中古市場での掘り出し物探しや、買取査定時の適正価格判断に役立てることができるでしょう。ぜひ、この知識を武器に、ペリカンの世界をさらに深く味わってください。

上山 隆 (ウエヤマ リュウ)
この記事の著者
上山 隆 (ウエヤマ リュウ)
リユース営業士・遺品整理士・終活アドバイザー。「りゅうさん」としてSNSで真贋や高価買取の豆知識を発信中。その圧倒的な商品知識と現場感覚を活かし、スーパーバイザーとして店舗のサポートも行う。
保有資格
リユース営業士/終活アドバイザー/遺品整理士