ペリカンスーベレーンM800・M400レビュー|モデルの違いと選び方ガイド
万年筆愛好家なら一度は憧れる「上がりの一本」、それがペリカンのスーベレーンです。モンブランやパイロットカスタム845など他ブランドの万年筆を使ってきた方が、次のステップとして必ず候補に挙げる銘品。しかし、M400、M600、M800、M1000と複数のサイズ展開があり、どれを選ぶべきか迷う方も多いでしょう。本記事では、スーベレーンの魅力を掘り下げつつ、各モデルの違いと最適な選び方を徹底解説します。
- ペリカンのスーベレーンとは?
- スーベレーンの特徴
- スーベレーンの名前の由来
- 型番にある「M」と数字の意味とは?
- ペン先の素材と書き味の違い
- ペリカンのピストン吸入機構について
- M400・M600・M800・M1000のスペック比較
- M400・M600・M800・M1000各モデルの特徴とレビュー
- M400・M600・M800・M1000の選び方ガイド
- まとめ
- 手帳やノートへの筆記が中心
- 軽量で持ち運びやすい万年筆が欲しい
- 女性や手の小さい方
- M400では少し小さい、M800では大きすぎると感じる方
- デスクワークとモバイル利用の両方で使いたい
- 14金ペン先の安定感を重視する方
- 「上がりの一本」を探している方
- 18金ペン先の柔らかい書き味を体験したい
- デスクでじっくり書く時間が多い方
- スーベレーンを極めたい熱狂的なファン
- 筆のような書き味を求める方
- 大きな手の持ち主
ペリカンのスーベレーンとは?
スーベレーン(Souverän)は、ペリカンを代表する万年筆シリーズです。その起源は1950年に発売された「モデル400」にあり、緑縞の美しいボディとピストン吸入機構で人気を博しました。しかし1960年代にボールペンの普及により一旦製造中止に。そして1982年、高級万年筆への需要の高まりとともに「スーベレーン M400」として復活を遂げます。
「スーベレーン」という名称が付けられたのはこの1982年からで、ドイツ語で「優れもの」「卓越した」を意味します。1997年にはM800が「ペン・オブ・ザ・イヤー」を受賞し、世界中の万年筆愛好家から絶大な支持を受けるようになりました。
新品だけでなく中古市場でも極めて高い需要を誇り、数十年前のモデルが今も現役で使用されているのは、その耐久性と普遍的なデザインの証です。
スーベレーンの特徴
独自のピストン吸入機構
スーベレーン最大の特徴は、インク瓶から直接インクを吸入するピストン機構です。カートリッジ式と異なり、インク容量が多く長時間筆記に適しています。尻軸を回転させることでピストンが上下し、インクを吸入・排出する仕組みは、メカニカルな美しさと実用性を兼ね備えています。
スーベレーンの名前の由来
「Souverän(スーベレーン)」はドイツ語で「主権者」「優れた」「卓越した」といった意味を持ちます。ペリカンがこのシリーズに込めた自信と誇りが、名前にも表れています。単なる筆記具ではなく、書くという行為を特別なものに変える道具――それがスーベレーンというわけです。
型番にある「M」と数字の意味とは?
スーベレーンの型番に使われる「M」は、ドイツ語で万年筆を意味する「Minen」または「Füllfederhalter(フュルフェーダーハルター)」の頭文字とされています。数字はサイズを表し、400、600、800、1000と大きくなるにつれてボディサイズも大きくなります。
ちなみに、ボールペンモデルには「K(Kugelschreiber=ボールペン)」が使われ、K400、K800といった型番が存在します。
ペン先の素材と書き味の違い
スーベレーンはサイズにによってペン先に使われている素材に違っており、M400・M600は14金、M800・M1000は18金が使われています。書きごこちや力の入れ方に違いがありますので、ペン先の感触を試してから好みのモデルを選ぶとよいでしょう。
ペリカンのピストン吸入機構について
スーベレーンのピストン吸入機構は、尻軸を反時計回りに回すことでピストンが下降し、インクを吸入します。構造がシンプルで耐久性が高く、数十年経過した個体でも正常に動作するケースが多いのが特徴です。
使用後はペン先を水で洗浄し、同じ要領で水を吸入・排出することでメンテナンスできます。カートリッジ式と比べてインク容量が多く、長時間の執筆や手帳記入に最適です。
ペン先やインクの洗浄を行う方に向けた、メンテナンス方法をまとめた記事もありますので、興味のある方は是非ご覧ください。
M400・M600・M800・M1000のスペック比較
ペリカンのスーベレーンには4つのサイズがあります。各モデルの主要スペックを表にまとめました。購入前の参考にしてください。

| モデル | 全長(収納時) | 全長(筆記時) | 軸径 | 重量 | ペン先素材 | インク容量 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| M400 | 約127mm | 約154mm | 約12mm | 約15g | 14金 | 約1.3ml |
| M600 | 約139mm | 約166mm | 約13mm | 約16.4g | 14金 | 約1.3ml |
| M800 | 約140mm | 約171mm | 約14mm | 約28.2g | 18金 | 約1.35ml |
| M1000 | 約149mm | 約181mm | 約15mm | 約32.6g | 18金 | 約1.35ml |
※重量は個体差があります。参考値としてご覧ください。
※画像は女性の手のサイズとなります。
M400・M600・M800・M1000各モデルの特徴とレビュー
M400:携帯性重視の実用派モデル

M400はこんな人におすすめ
M400を持った感じ
M400は最も軽量で、キャップを外すと約13gという軽さ。長時間持っても疲れにくく、手帳サイズに収まるコンパクトさが魅力です。細身のボディは携帯性に優れ、ペンケースにもすっきり収納できます。
M400の使用感
14金ペン先は適度な硬さがあり、細かい文字を書くのに適しています。日本の市場ではEF(極細)やF(細字)が人気で、漢字筆記との相性が抜群。スーベレーンのエッセンスを手軽に楽しみたい方の入門モデルとしても最適です。
ただし、手の大きい男性がキャップを後ろにつけずに筆記すると短く感じる場合があります。
M600:バランス型の万能モデル

M600はこんな人におすすめ
M600を持った感じ
M400とM800の中間サイズで、重量バランスが良好。約16.7gという重さは軽すぎず重すぎず、様々な筆記スタイルに対応できます。軸径も13mmと標準的で、多くの人の手にフィットするサイズ感です。
M600の使用感
M400より一回り大きいため、キャップを外した状態でも筆記がしやすく、男性の手にも馴染みます。インク容量もM400より多く、頻繁にインク補充をしたくない方に向いています。
M800ほどのステータス感はありませんが、実用性とブランド価値のバランスが取れた「ちょうどいい」モデルです。
M800:愛好家が選ぶ定番モデル

M800はこんな人におすすめ
M800を持った感じ
真鍮部品による約28gの重量感は、安定した筆記を可能にします。軸径14mmの太さは握りやすく、長時間の執筆でも疲れにくい設計。キャップをつけた状態で約171mmという長さは、デスク用万年筆として理想的なサイズです。
M800の使用感
1997年「ペン・オブ・ザ・イヤー」受賞の傑作。18金ペン先の滑らかさと弾力は、まさに「書く喜び」を感じさせてくれます。筆圧をかけずとも豊かなインクフローがあり、紙面を滑るような書き心地。
多くの愛好家が「最後の一本」として選ぶのがこのM800です。中古市場でも最も取引が活発で、資産価値の高さも魅力のひとつ。ビジネスシーンでも存在感があり、クライアントとの契約書にサインする際などに品格を添えてくれます。
ただし、重量があるため長時間の携帯には向きません。あくまでデスク用、または特別な場面での使用が中心となるでしょう。
M1000:圧倒的な存在感の最上位モデル

M1000はこんな人におすすめ
M1000を持った感じ
シリーズ最大の約32.8gという重量は、手に取った瞬間から特別感があります。軸径15mmの太さは好みが分かれるところですが、大きな手の方にはこの上ないフィット感。全長181mm(筆記時)は圧倒的な存在感です。
M1000の使用感
特大の18金ペン先は非常に柔らかく、筆圧の強弱で線幅が大きく変化します。和文書道のような表現力があり、万年筆の書き味を極めたい玄人向け。ただし、強い筆圧で書く習慣がある方は、ペン先が開きすぎてインクフローが過多になる可能性があります。
M800でも物足りない、さらなる高みを目指したいという方が辿り着く究極の一本。状態が良ければ中古市場でも高値安定の人気モデルです。
M400・M600・M800・M1000の選び方ガイド
スーベレーンは4つのサイズ展開があり、それぞれ明確な個性を持っています。選び方のポイントは大きく分けて「手の大きさ・筆圧」と「使用目的」の2つ。自分の書き方や使用シーンを思い浮かべながら、最適な一本を見つけてください。
手の大きさや筆圧から選ぶ方法
M400
M600
M800
M1000
女性の手で各モデルを持った様子です。M400の携帯しやすいコンパクトさから、M1000の存在感ある大きさまで、サイズ感の違いが一目瞭然です。特に女性や手の小さい方は、M400やM600が握りやすく、長時間の筆記でも疲れにくいことが分かります。一方、M800以上になると重量感と軸の太さが増し、しっかりとした書き心地を求める方に適したサイズになります。
| 特徴 | オススメ | 解説 |
|---|---|---|
| 小さめの手・軽い筆圧の方 | M400 | 軽量で取り回しが良く、長時間持っても疲れません。14金ペン先は安定した書き味で、軽いタッチで書く方に最適です。 |
| 標準的な手・中程度の筆圧の方 | M600/M800 | M600は携帯性も重視したい方、M800はデスク中心の使用で18金ペン先の柔らかさを楽しみたい方に。 |
| 大きめの手・しっかりした筆圧の方 | M800/M1000 | M800は汎用性が高く、M1000は表現力を極めたい玄人向け。ただし、筆圧が強すぎる方は14金ペン先のM600も検討価値があります。 |
使用目的で考える方法
| 特徴 | オススメ | 解説 |
|---|---|---|
| 手帳・ノート記入中心 | M400 | 携帯性に優れ、細字ペン先なら小さな文字もきれいに書けます。 |
| デスクワークとモバイルの両方 | M600 | どちらの用途にも対応できるバランス型。インク容量も十分です。 |
| デスクでの長時間執筆 | M800 | 重量感が安定感を生み、18金ペン先の書き心地が長時間の執筆を快適にします。 |
| 署名・重要書類への記入 | M800/M1000 | 存在感があり、ビジネスシーンでの品格を演出できます。営業職の方で、お客様に署名をお願いする場合などにもオススメです。 |
| 書道的な表現を楽しみたい | M1000 | 筆のような線幅の変化を楽しめる唯一無二のモデルです。 |
まとめ
ペリカン スーベレーンは、M400からM1000まで明確なサイズ展開があり、それぞれに異なる魅力があります。携帯性のM400、バランスのM600、定番のM800、究極のM1000――あなたの手の大きさ、筆圧、使用目的に合わせて最適な一本を選んでください。
多くの愛好家が「上がりの一本」として選ぶM800は、初めてのスーベレーンとしても、万年筆コレクションの集大成としても申し分ない選択です。他ブランドの万年筆を経験してきた方なら、スーベレーンの真価を十分に理解できるでしょう。
中古市場でも高い需要があり、数十年前のモデルが現役で取引されているのは、その品質と普遍的な価値の証。西ドイツ製の刻印がある個体や、天冠に雛が2羽描かれたヴィンテージモデルは、さらに高い価値を持ちます。
あなたにとって最適なスーベレーンを見つけ、「書く喜び」を存分に味わってください。
スーベレーンは中古市場でも高い需要を誇り、特にM800やヴィンテージモデルは高値で取引されています。使わなくなったペリカン万年筆が眠っていませんか?当店では、モデルの特性や年代による価値を正確に査定し、適正価格で買取いたします。西ドイツ製刻印や限定カラーなど、希少価値のある個体は特に高価買取の対象です。まずはお気軽に無料査定をご利用ください。
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