ファーバーカステル解説|伯爵コレクションはクラシック万年筆の最高峰
- ファーバーカステルはドイツの世界最古文具メーカー
- ファーバーカステルの万年筆シリーズ
- クラシックコレクション(伯爵コレクション)のレビュー
- ドイツ製万年筆、ペリカン スーベレーンM600との比較
- ファーバーカステル万年筆のお手入れのポイント
- 限定生産のペン・オブ・ザ・イヤーとは
- まとめ
- ファーバーカステル伯爵コレクションの種類について
- 木軸の種類について
- 万年筆の実際の使い心地について
- ペン・オブ・ザ・イヤーなど限定モデルの紹介
- クラシックコレクション
- クラシックアネロ
- ギロシェ
- タミシオ
- アンビション
- エモーション
- ベントレー
- マグナム コーカサスウォルナット など
- 直射日光の当たる場所に長時間置かない(木材の退色や乾燥の原因)
- エアコンの風が直接当たる場所に置かない(急激な乾燥を招く)
- 濡れた手で触らない(水分が木材に染み込み、シミや変色の原因となる)
- 落下させない(木材は衝撃に弱く、割れやヒビが入る可能性がある)
- 2024 オスマン帝国
- 2023 エインシャント エジプト
- 2022 アステカ族
- 2021 騎士団
- 2020 スパルタ
- 2019 サムライ
- 2018 古代ローマ帝国
- 2017 ヴァイキング
- 2016 ウィーン・シェーンブルン宮殿
- 2015 ポツダム・サンスーシ宮殿
- 2014 エカテリーナ宮殿
- 2013 ?
- 2012 ゴールドオーク
- 2011 翡翠
- 2010 シークレット・オブ・アート
- 2009 ホースヘア
- 2008 サテンウッド
- 2007 ストーンウッド
- 2006 マンモス・アイボリー
- 2005 ガルーシャ
- 2004 琥珀(アンバー)
- 2003 スネークウッド
大人の筆記具といえば万年筆。一生大事にできる上質な万年筆について詳しく知りたいという方にオススメしたいのが、ファーバーカステルの伯爵コレクションと呼ばれる万年筆シリーズです。
この記事では、
などについて詳しく解説しています。
万年筆は背筋が自然と伸びてしまう、特別で粋な文房具。ファーバーカステルの魅力を紹介していますので、ぜひ一緒に万年筆の沼にはまってもらえると嬉しいです。
ファーバーカステルはドイツの世界最古文具メーカー
ファーバーカステル(Faber-Castell)は、1761年にドイツ・ニュルンベルク近郊で創業された、世界最古の筆記具メーカーです。260年以上の歴史を持ち、現在の鉛筆の基準となる「六角形デザイン」や「硬度・長さの規格」を作ったパイオニアとして知られています。
ファーバーカステルと聞いて、緑色のパッケージに入った「ファーバーカステル9000番」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。この高級鉛筆は、デッサンや製図用として世界中のデザイナーや建築家に愛用されており、ファーバーカステルの技術力を象徴する製品の一つです。硬度のバリエーションの豊富さと、安定した芯の品質は、100年以上変わらぬ信頼を獲得しています。
しかし、このブランドの真骨頂は画材だけにとどまりません。「グラフ・フォン・ファーバーカステル(伯爵コレクション)」の名を冠した最高級筆記具ラインは、希少木材を使用した木軸万年筆の分野で他の追随を許さない地位を確立しています。ペルナンブコ、スネークウッド、グラナディラといった銘木を精巧に加工する技術は、260年以上培ってきた木材加工のノウハウが結実したものと言えるでしょう。
ファーバーカステルの万年筆シリーズ
グラフ・フォン・ファーバーカステル(伯爵コレクション)は、ファーバーカステルの高級筆記具ラインの総称です。このラインには4つのシリーズが存在し、それぞれが異なる個性を持っています。
ファーバーカステル 伯爵コレクションシリーズ一覧
クラシックコレクション
グラナディラ、ペルナンブコ、エボニー(黒檀)などの希少な高級木材や、プラチナコーティングされた金属を使用した最高級シリーズです。時を超える普遍の価値を持ち、最高級の素材と職人技が光る逸品として世代を超えて愛されるコレクションです。それぞれの木材が持つ独特の質感と風合いを楽しめ、使うほどに味わいが深まります。一生ものとして大切に使い続けられる、格調高い万年筆です。軸はストライプのリブが入っているのが特徴です。
クラシックアネロ
「アネロ」はイタリア語でリングを意味し、プレシャスレジンとプラチナコーティングされたメタルリングの組み合わせが特徴のシリーズです。精緻なメタル製リングの輝きと、ボディとの効果的なコントラストが魅力で、洗練されたデザインが手元を美しく彩ります。100以上の工程をすべて職人が手作業で仕上げており、クラシックコレクションをベースにより華やかなデザインを求める方におすすめです。
その他、ファーバーカステル万年筆シリーズ
伯爵コレクションの他に万年筆シリーズはいくつかありますがどれも精錬されたフォルムと心地よい書き味が魅力の高品質な万年筆です。実際に握ってみて、お好みの1本を見つける楽しみがあります。
クラシックコレクション(伯爵コレクション)のレビュー

クラシックコレクションの万年筆が手元にありますので、実物を見ながらレビューしていきます。今回紹介する万年筆は、
「ファーバーカステル クラシックコレクション ペルナンブコ プラチナコーティング EF」です。
実際の書き味や手馴染みなどを比較しながら解説していきます。
クラシックコレクション万年筆のフォルムとデザイン
クラシックコレクションの特徴は木軸の柔らかく温かみのあるグリップ感が魅力です。
重心は金属キャップが安定したバランスを保っているので軽すぎず、胸ポケットに入れた際にも適度な重みで「ペンが入っている」感覚を持つことができます。(ペンの入れ忘れがある人にはわかってもらえる感覚ではないでしょうか。)
軸径は比較的スマート寄りでありスリム〜中くらいの感覚で、女性の手にもなじみやすい印象。女性スタッフに試し書きしてもらった感想は「細かい文字も書けるし、書き続けていても疲れない。明るい茶色もいい感じだと思います。書くときキャップはペン尻に付けずに外したままのほうがバランスがいいですね」とのことでした。
木軸の種類

手元のクラシックコレクションはペルナンブコ材を使用したモデルで、深みのある赤褐色と細かな木目が美しい逸品です。表面には薄くラッカー仕上げが施されていますが、天然木の質感は十分に感じられます。
木軸は使い込むほどに色が濃くなり、味が出てくるのも特徴です。自分だけの万年筆を育てる、という楽しみがあり、長い年月使うことを想定された万年筆の良さがにじみ出る逸品であるといえるでしょう。
クラシックコレクションの最大の特徴である希少木材を使用した軸にはいくつかの種類がありますので、主に使用される木材を紹介します。
ブラジル原産の硬質木材で、バイオリンの弓にも使用される銘木です。赤褐色の美しい木目と、手に吸い付くような滑らかな質感が特徴です。使い込むほどに色が深まり、独特の艶が出てきます。
インドネシア原産の縞黒檀で、黒と茶色の美しいストライプ模様が特徴です。エボニーの一種ですが、独特の縞模様によって個性的な表情を持ちます。硬度が高く耐久性に優れ、木目の美しさと実用性を兼ね備えた人気の素材です。
アフリカ原産の黒檀の一種で、クラリネットやオーボエなどの木管楽器に使用される高級木材です。黒に近い濃い色合いと緻密な木目が特徴で、非常に硬く安定した素材です。
漆黒の光沢を持つ黒檀の総称で、最高級の木材として知られています。非常に硬質で緻密な木質を持ち、使い込むほどに深い艶が増していきます。重厚感のある見た目と滑らかな手触りが特徴で、高級万年筆の軸材として理想的な素材です。
その名の通り蛇の鱗のような独特の模様を持つ、世界で最も高価な木材の一つです。極めて硬質で耐久性に優れ、コレクター垂涎の素材として知られています。
木軸のほかに、プラチナコート素材・スターリングシルバー素材の2種もあります。
ファーバーカステルの刻印・ロゴ

キャップトップには、ファーバーカステルを象徴する王冠のロゴが刻印されています。この王冠は、創業家がドイツ貴族の爵位を授かったことに由来するもので、ブランドの格式と伝統を表現しています。
その下には「GRAF VON FABER-CASTELL」と刻まれており、この裏側には「HANDMADE IN GERMANY」とあります。これは伯爵コレクションであることを示し、かつドイツにて手作業で作られているとの証です。
旧ロゴと新ロゴの違いと変更時期

キャップトップやペン先に刻印されているロゴは旧ロゴと新ロゴがあります。正確な時期は現在調査中ではありますが、おそらく2012年から2013年頃にロゴ変更がされたのではないかと思います。
旧ロゴは盾のエンブレム周りの装飾が細かく、新ロゴは王冠を目立たせスッキリとした印象です。繊細な刻印だった旧ロゴの万年筆は人気が高く、現在ではコレクターアイテムとして高値で取引されるケースもあります。
キャップクリップ

クリップは可動式のバネ機構を採用しており、その精巧な作りはファーバーカステルの高級ラインの証です。適度なテンションで胸ポケットにしっかりと固定でき、かつ脱着時のスムーズさも両立されています。
ペン先

ペン先は18金製で、ロジウムコーティングが施されています。ペン先にはブランドロゴの刻印と、金の純度を示す「750」(18金を意味する)と18ctの刻印が確認できます。
18ctは日本では聞きなれないかもしれませんが、ドイツやイギリスといったヨーロッパ圏内でよく使われる金の純度を示すもので、18金(日本では18kと呼ぶことが多い)の意味です。つまり、18k・750・18ctはすべて同じ意味となります。

ペン先のサイズはEF(極細字)ですが、ペン先をみるに日本の万年筆と比較するとやや太めの線幅になります。
画数の少ないアルファベット文化であるヨーロッパの万年筆は一般的に日本製よりも太い傾向にあるので、日本製万年筆のEFを使い慣れている方が、ファーバーカステルのEFを使うと少々違和感を感じるかもしれません。
ペン先の形状は、やや硬めのセミフレックスタイプです。強い筆圧をかければわずかに開きますが、基本的には安定した筆記に適した硬さです。ペン先のカット形状は丸みを帯びており、紙への引っかかりが少ない設計になっています。
書き味とグリップ感
実際に手に取ってみると、まず感じるのは木軸特有の温かみです。金属やレジン製の万年筆とは明らかに異なる、自然な手触りが心地よく、長時間の筆記でも疲れにくい印象です。
重量バランスは後方寄りで、キャップを外した状態でもバランスが良く、キャップをポストしなくても安定して書けます。軸径は約13mm程度で、男性女性ともに使いやすいサイズです。
木軸表面には細かな凹凸があり、これが適度なグリップ感を生み出しています。汗をかいた手でも滑りにくく、実用性の高い設計と言えるでしょう。軸の六角形断面も、転がり防止とグリップ安定性の両面で効果を発揮しています。
書き味は非常にスムーズで、ペン先が紙の上を滑るような感覚です。インクフローは潤沢で、速記にも対応できる筆記性能を持っています。ペン先の硬さは適度で、日常的な筆記からサイン、宛名書きまで幅広い用途に対応できます。
インクの補充方法とコンバーターについて
クラシックコレクションの万年筆は、カートリッジ式とコンバーター式の両方に対応しています。購入時には専用のカートリッジインクが付属していますが、多くの万年筆愛好家は様々なインク色を楽しめるコンバーター式を好んで使用していると耳にします。
ファーバーカステル純正のコンバーターは回転式で、ペン先をインク瓶に浸してノブを回転させることでインクを吸入します。操作は直感的で、初めての方でも扱いやすい設計です。コンバーターの容量は約0.7ml程度で、日常使いであれば1週間から2週間ほど持ちます。
インクの種類や色を変える際には一度万年筆を洗浄する必要がありますが、万年筆のお手入れ・洗浄方法については別記事に詳しくまとめてありますので、気になる方は是非ご覧ください。
内側口金部にある数字刻印は型番?シリアルナンバー?考察してみました

ファーバーカステル万年筆のクラシックコレクションには、万年筆内部の口金部にナンバー刻印がありました。画像の製品には「010518」と6ケタの数字があります。
この数字は何を示しているのでしょうか。個体ごとに打刻されているシリアルナンバー?
リユース相談本舗にあるファーバーカステル万年筆をかき集めて調査したところ、プラチナコーティングの製品には番号の他にPT、スターリングシルバーの製品には 925(シルバーを意味する数字)がありました。
ファーバーカステルの万年筆は職人が手作業で制作しているため、個体ごとに付けられたシリアルナンバーであると思っていたのですが、製造年月かも?との見方ができると思っています。
例えば 010518 の場合、18年01月05日という日付ではないでしょうか。
これまでに確認された番号をリスト化してみると、末尾2桁が西暦を示していると考えた場合、末尾2桁が「18」や「20」といった数字の大きい製品には新ロゴ、「08」「11」といった数字の小さい製品には旧ロゴが刻まれていました。
先述した通り、ファーバーカステルは旧ロゴと新ロゴがあると解説しましたので、なにか関係があるのでは?と思ってしまいますよね。
まだまだ考察の域を出ませんが、一日の製造数は限られているはずですので、同じ数字が付いた万年筆の流通数は少ないはずです。つまりシリアルナンバーに近しい意味合いを兼ねた製造年月を示した数字ではないかと考えています。
本当のところはどうなんでしょうか。真偽のほどが分かりましたら追記いたします。
ドイツ製万年筆、ペリカン スーベレーンM600との比較

ここでクラシック万年筆の代表格として、ペリカンのスーベレーンM600と比較してみましょう。どちらもヨーロッパを代表する高級万年筆ですが、使用感には明確な違いがあります。
まずは各種ペリカンスーベレーンとファーバーカステルのサイズを比べるために並べてみました。
M1000は胴回りが太めであり、M400は長さが短いという特徴があり、どちらも持った感触が明らかに違っていて、ファーバーカステルのクラシックコレクションの大きさにはペリカンスーベレーンのM600が比較的近いかなという印象です。
手に持った時の感じの違い
最も顕著な違いは素材感です。ペリカンM600はレジン(合成樹脂)製で、滑らかで均一な表面を持っています。対してファーバーカステルのクラシックコレクションは天然木製で、木目の凹凸や自然な質感が手に伝わってきます。
重量はペリカンM600が約18g、ファーバーカステルのクラシックコレクションが約30g前後と、ファーバーカステルの方がかなり重めです。この重量差は好みが分かれるところで、軽快な筆記を好む方にはペリカン、ずっしりとした書き応えを求める方にはファーバーカステルが向いています。
軸径はペリカンM600が約12.5mm、ファーバーカステルが約13mmとほぼ同等ですが、ファーバーカステルは六角形断面、ペリカンは円形断面という違いがあります。六角形は転がり防止と安定したグリップ感をもたらし、円形は握る位置の自由度が高いという特徴があります。
ペン先の違い
ペリカンM600のペン先は14金製、ファーバーカステルのクラシックコレクションは18金製です。金の含有量が多いファーバーカステルの方が、理論上はペン先がやや柔らかくなりますが、実際の書き味における差は設計による部分も大きく、単純に金の含有量だけでは比較できません。
ペン先の形状にも違いがあります。ペリカンは丸みを帯びた古典的なフォルムで、ファーバーカステルはよりシャープで現代的な印象です。どちらも高品質な仕上げですが、デザインの好みで選ぶのも良いでしょう。
また、ペリカンM600はピストン吸入式を採用しているのに対し、ファーバーカステルはカートリッジ・コンバーター式です。ピストン式は一度に多くのインクを吸入できる利点がありますが、メンテナンスはやや複雑になります。
書き味の違いと字幅EFの比較

ペリカンM600はやや柔らかめのペン先で、筆圧の変化に応じてわずかに線幅が変わります。これにより、筆記に表情が生まれ、手書きならではの温かみを表現できます。
対してファーバーカステルのクラシックコレクションは硬めのペン先で、安定した線幅を保ちます。ビジネス文書や長文の執筆など、一定の書き味を求める用途に適しています。
インクフローはどちらも潤沢ですが、ペリカンの方がややウェットな書き味で、ファーバーカステルはドライ寄りの書き味です。これは好みの問題ですが、速乾性を重視するならファーバーカステル、インクの発色を重視するならペリカンという選択もあるでしょう。
総合的には、ペリカンM600は万年筆らしい柔らかな書き味と軽快な使用感が魅力で、ファーバーカステルのクラシックコレクションは重厚感と木軸の質感、安定した筆記性能が魅力と言えます。
字幅EF同士を比べたところ字幅に差はあまり感じません。
ですが、日本製万年筆のセーラーなどのEFよりかはどちらも太字寄りです。画数の少ないアルファベット文化であるヨーロッパ製の万年筆は一般的に日本製よりも太い傾向にあるので、日本製万年筆のEFを使い慣れている方が、ファーバーカステルのEFを使うと少々違和感を感じるかもしれません。
リユース相談本舗ではファーバーカステルをはじめとした万年筆を積極的に買取しております。ペリカン・モンブラン・セーラー・シェーファーといった著名ブランドの万年筆はもちろんの事、インク漏れしている万年筆やペン先の潰れた万年筆、筆記が出来ない状態の万年筆も喜んでお買取いたします。万年筆のペン先は金製品ですので、ペン先のみのお持ち込みの歓迎。どういった物が売れるのかわからない場合はお気軽にお問合せください!
万年筆買取ファーバーカステル万年筆のお手入れのポイント
木軸の万年筆は、レジン製や金属製とは異なる特別な配慮が必要です。適切なメンテナンスを行うことで、何十年も美しい状態を保ち、経年変化を楽しむことができます。
木軸のメンテナンス
木材は自然素材のため、湿度や温度の変化に敏感です。極度の乾燥環境では割れ(クラック)が発生するリスクがあり、逆に高湿度環境では木材が膨張して変形する可能性があります。保管時は、湿度40~60%程度の安定した環境が理想的です。
定期的なオイルメンテナンスも重要です。蜜蝋(ビーズワックス)や専用の木材保護オイルを柔らかい布に少量取り、木軸全体に薄く塗り込みます。これにより、木材の乾燥を防ぎ、美しい艶を保つことができます。頻度は使用状況にもよりますが、年に2~3回程度が目安です。
オイルを塗る際は、金属部品やペン先に付着しないよう注意が必要です。特にペン先にオイルが付くとインクフローに影響を与える可能性があるため、ペン先周辺は避けて作業しましょう。
通常のメンテナンス
木軸特有のメンテナンス以外にも、万年筆として基本的なお手入れも忘れずに行いましょう。
長期間使用しない場合は、インクを完全に洗浄してから保管します。首軸内にインクが残っていると固着し、次回使用時にトラブルの原因となります。ぬるま湯でインクが完全に抜けるまで洗浄し、十分に乾燥させてから保管してください。
クリップやキャップリングなどの金属部品は、柔らかい布で拭いて指紋や汚れを落とします。プラチナコーティングされた部分は、研磨剤入りのクロスは使用せず、マイクロファイバークロスなどで優しく拭き取りましょう。
注意すべきポイント
木軸の万年筆を長持ちさせるために、以下の点に注意が必要です。
適切なケアを行えば、木軸の万年筆は何十年も使い続けることができ、使うほどに手に馴染み、独特の風合いを増していきます。この経年変化こそが木軸万年筆の最大の魅力であり、レジン製や金属製では決して得られない喜びです。
限定生産のペン・オブ・ザ・イヤーとは
ペン・オブ・ザ・イヤー(Pen of the Year)は、ファーバーカステルが2003年から毎年発表している超限定生産の最高級万年筆シリーズです。毎年異なるテーマに基づいて設計され、希少素材と卓越した職人技術を結集した芸術作品とも言える存在です。
コンセプトと特徴
各年のペン・オブ・ザ・イヤーには、歴史的な出来事、文化、自然、芸術など様々なテーマが設定されます。そのテーマに沿った希少素材が選定され、熟練職人の手作業によって一本一本丁寧に製作されます。
使用される素材は、琥珀、マンモスの牙、古代の木材、貴重な宝石、特殊なレザー、ガラスなど、通常の万年筆では考えられないほど多彩です。これらの素材は加工が極めて難しく、高度な技術と豊富な経験が必要とされます。
生産本数は年によって異なりますが、通常は万年筆で数百本程度、ボールペンやローラーボールを含めても1,000本前後という超限定生産です。各ペンにはシリアルナンバーが刻印され、証明書と専用の木製ケースが付属します。
コレクターズアイテムとしての価値
ペン・オブ・ザ・イヤーは、発売時から高額(20万円~50万円以上)ですが、人気のある年のモデルは中古市場で定価を大きく上回る価格で取引されることもあります。特に初期のモデル(2003年~2010年頃)や、使用素材が特に希少なモデルは、コレクターの間で高い評価を受けています。
投資対象として見られることもありますが、本来は実用できる芸術作品として楽しむべきものです。未開封のまま保管するよりも、実際に使用してその書き心地と素材の経年変化を味わうことで、真の価値が理解できるでしょう。
購入と保管の注意点
ペン・オブ・ザ・イヤーを購入する際は、必ず正規販売店を利用し、保証書と付属品が完備されているか確認してください。中古市場で購入する場合も、製造年、素材、付属品の有無を十分に確認することが重要です。
保管に際しては、素材ごとに適切な環境を維持する必要があります。木材や象牙などの有機素材は湿度管理が重要で、琥珀などの樹脂系素材は紫外線を避ける必要があります。専用の木製ケースに入れ、安定した温湿度の環境で保管しましょう
ペン・オブ・ザ・イヤーの一覧
2013年をのぞく、これまでに発表されたペン・オブ・ザ・イヤーのテーマをまとめました。
※2013年は発表がなかったのか、該当する万年筆が見つかりませんでした。
ファーバーカステル ペン・オブ・ザ・イヤーテーマまとめ
まとめ
ファーバーカステルのグラフ・フォン・ファーバーカステル(伯爵コレクション)、特にクラシックコレクションは、木軸万年筆の最高峰として揺るぎない地位を確立しています。260年以上の歴史で培われた木材加工技術と、ドイツの精密な工業技術が融合した逸品です。
天然木ならではの温かみ、使い込むほどに深まる経年変化、そして安定した書き心地は、一度体験すると他の万年筆では物足りなく感じるほどの魅力があります。
高価な買い物ではありますが、適切にメンテナンスすれば一生使い続けられる万年筆であり、次の世代に受け継ぐこともできる、真の意味での「資産」と言えるでしょう。
木軸万年筆に興味を持たれた方は、ぜひ店頭で実際に手に取り、その質感と書き心地を体験してみてください。きっと、その魅力の虜になるはずです。